海外で子どもが反抗期に突入。どうやって勉強してもらう?【バンコクおやこ相談室2026年11月】

【今月のご質問】
そろそろ思春期に差し掛かる年齢の子どもをバンコクで育てています。海外暮らしには治安上の不安が伴うので、ちょっとした近所へのお出かけにも保護者同伴とならざるを得ない生活。このような環境に息苦しさを覚えるのか、少し早めの反抗期が来ているようです。日本で生活していた時よりも集中力を欠いて見え、とても勉強に取り組んでくれそうにありません。家の中にいてもゲームや動画に逃避してばかりです。親としては子どものこのような姿に苛立ちを覚え、つい厳しい言葉が口を突いて出てしまいます。何か机に向かう糸口を見つけられないかと悩んでいます。
【ご回答】
おうちの方がお子様を心配し、よく観察されていますね。それゆえに気になるところ、目につくところが増え、いろいろとお話をお子様にされているのだなと思います。
しかし、思春期に入ると自我が芽生えてどんどん強くなり、大人側の言葉をすんなり受けてくれなくなります。お子様の思春期は、おうちの方にとってこれまでの親と子の関係を見直すきっかけとするべきタイミングです。次のようなことをお考えになってみてはどうでしょうか。
①ご家庭のルールの再確認
思春期を迎える年齢は、お子様が社会性を身につける年齢とほぼ同じです。これまで自分や自分の家族くらいしか見えていなかったのが、周りのお友達をよく見るようになり、人と自分の違うところを見つけ、あっちがいい、こっちがいい、うちのはいやだ、となることもあります。
しかし、社会性を獲得するということは、周りの人々とのルールを守らねば生きていけない、生きづらくなるということを認識するということでもあります。よって、「○○家のルール」を明確にし、それを共有しましょう。
項目としては、勉強面、生活面、スマホを持たせているならその使い方、などがメインになりますね。おうちの方がお子様にどうあってほしいのか、がベースになりますから、おうちの方同士でお話し合いになって柱を立ててから決めていくとよいでしょう。
ただし、憲法のように第何十条まであるようなものは覚えられませんし、守れませんから、数を少なくし、内容を簡略化し、だれがどう見てもそれは守るべきものだと思えるルールにすることが大切です。文章化する、しないはどちらでもよいでしょう。
また、「○○家のルール」とする以上、大人側も守らねばなりません。子どもがそれを「子どもをしばりつけるためだけのルールだ」と認識すると余計な反発を生みます。
②叱るのはルールを破ったときのみにする
上記のとおり、思春期と社会性の獲得時期はほぼ同じです。社会性を得るというのは周りとのルールを守って生きるということとほぼ近いですから、指導を受けるとき、叱られるときも、その理由が「ルールを破ったから」となっていると、お子様は反発もするでしょうが、心の中で納得もしやすいでしょう。
例えば勉強面でのルールであれば、小学生のうちは「宿題は期限までに必ずやりきる」くらいでいいのではないか、と私は思います。これなら、お子様もやらないといけないことはわかってる、となりやすいですね。
学校から帰ってきて、晩御飯の前に宿題をやってしまえば、そのあとの時間は自由に使えるし、眠くなったら寝ればいいのだから、と思われて、「早く宿題やっちゃいなさいよ」と言っていませんか。思春期に入ったお子様にこの言い方をするとたいてい反発します。家のルールに従うとYes以外の選択の余地がないのに、心がそこに追いついていかないからです。
そこで一工夫を加えます。私はおうちの方によく、いつ勉強するかを選択肢にして提示し、お子様に決めさせるとよい、と伝えています。ご飯のあとに宿題をする、などの本人の決断を尊重する。そしてその時間になって自分から取り組む、または促されたら取り組むうちは応援してあげましょう。促されないとやらない、などの愚痴はぐっと飲み込んでくださいね。
しかし、自分が決めた時間になり、促されてもやらないとなれば、それは叱るべきです。ただこの時、「勉強しないから叱られる」のではなく「ルールを破ったから叱られる」とお子様に認識させることが大切です。
もちろん、勉強のスタートの時刻が遅いとその日のうちに終わらないなどのリスクがあるから、どうしても強く言ってしまう、という方もいらっしゃいますよね。それは選択肢を提示するときに先に伝えて、お子様が自分で判断するための材料にできるようにするべきです。また、もし終わらなかったとしても、お子様自身が「晩ご飯が終わったあとに始めると宿題が終わらないことがある」と知り、それを今後に生かすならば、それも成長につながるでしょう。
③スモールステップを意識する、意識させる
なかなか家庭学習に向かえないお子様に突然高い目標を掲げても、初めから無理、とあきらめられてしまうこともありますよね。その場合は、スモールステップを意識することが大切です。すなわち、階段(ステップ)の一段一段を小さく(スモール)設定し、達成感を得やすくするということです。
「はじめの5分間はまず机に座るだけでもOK」「15分やったら、おやつタイムにする」など、さまざまな案の中からお子様に合いそうなもの、お子様ができそうなものを選んでいくとよいでしょう。
④あえて言わない、あえて見ない
おうちの方がお子様に絶対にやってほしいこととお子様がやりたいことをどう両立するかは永遠の課題であり、パーフェクトにできるお子様はほとんどいません。100点にできるだけ近づいてほしい、と思うのはおうちの方として自然な心情ですよね。しかし、行きすぎはお子様の自主性を奪う結果にもなりかねません。
思春期に入ったら、お子様がやるべきことをやり終えたら、そこから先、おうちの方はあえて言わず、あえて見ず、お子様の視野から離れるようにするとよいでしょう。思春期には自分のプライベートゾーンを欲しがるからです。自分の部屋にいて好きなことをやっているのだろうな、と思うくらいがちょうどよいでしょう。ただし、部屋のカギをかけさせるのは、私は避けた方がよいと思っています。私だったら自分の家のルールに入れますね。ただし、大人側も「必ずノックをして声をかけてから入る」などのルールを作り、守りましょう。「親は自分のプライベートを尊重してくれている」とお子様が思えるようにすることが大切です。
このように、思春期になると自我が強くなり、親からの指導を好まなくなることが多いです。特に生活面で言われることには納得感があるものの、学習面で指導を受けるのに強く反発することが多いですね。「お母さんは先生じゃないくせに、私に勉強のことをうるさく言う!」などと思っているのかもしれません。
また、海外暮らしだと外遊びをしてストレス発散をするチャンスが少なく、必然的に家にいる時間が長くなります。言葉は大げさかもしれませんが、お子様によっては「いつも親に監視されている」くらいに思っているのかもしれません。本当に監視されているおうちの方はそうそういないでしょうが…。
だからこそ、おうちの方があえて見ないようにすることが必要なのです。おうちでその環境が作れないときは、周りの大人を活用するのがよいでしょう。習い事でも学習塾でもよいと思います。私もこの仕事をして長くなりますが、おうちの方から見たお子様と私たちから見たお子様の様子が全然違うことは珍しいことではありません。
お子様は、自分を叱る人には「嫌な人、怖い人、できれば避けたい人」というレッテルを貼りがちです。その対象におうちの方が入らないようにしましょう。おうちの人が「勉強を教える・管理する人」ではなく、お子様の頑張りを褒め、認め、励ます人に徹することで、親子の衝突を劇的に減らすことができます。
思春期はお子様が変わるタイミングであるだけでなく、おうちの方にとっても親子関係をアップデートするチャンスでもあります。まずは小さなルール作りとスモールステップから、焦らず試してみてください。困ったときは塾など周りの大人も頼りながら、一緒に乗り越えていきましょう。

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